神経衰弱をしていたのだが、運のよさも手伝って私は次々とペアが成立し、ほぼ私のボロ勝ち状態となっていた。
そんなとき、中国人の先生が私に向かってこう言った。
给我放点水吧!
“放水fàng//shuǐ”?
直訳すれば「水を放つ」。つまり「放水する」だが、突然そんなことを言われても意味不明だ。
ところが、中国語ではこの“放水”に意外な意味があるのだ。
電子辞書で“放水”を引くと、以下の用法が出てくる。
1. (水門や水路を開いて)放水する
2. 貯水池に水を入れる
3. 八百長試合をする
中日辞典 第3版
そう。“放水”にはスポーツやゲームなどで「手を抜く」「わざと負ける」という意味があるのだ。
さらに中中辞典も引いてみると、こちらには1・2の意味の記載はなく、3の意味だけ載っていた。
指体育比赛中串通作弊,一方故意输给另一方。
现代汉语词典 第7版
辞書の説明だけ見ると「不正」のニュアンスが強そうだが、先生曰く、親しい間柄でゲームをするときなどに「勝たせてあげる」「手加減する」といった柔らかい使われ方をする場合もある。
先生の“给我放点水吧!”もまさにそのパターンで、「ちょっと勘弁してよ~」くらいの軽い意味だそうだ。
百度百科によると、由来は周の時代に遡る。
東周は稲を作ろうとしたが、川上にある西周が水を堰き止めてこれを妨害した。
そこで蘇子という人が使者として西周に赴き、西周の君主を説得して東周に水を流させることに成功したのだが、その際、蘇子は次のように言った。
「東周では今、麦を作っています。水を止めたままにしておくと、東周は麦を育てて逆に豊かになるでしょう(※麦は水に弱いため)。もし本当に東周を困らせたいなら、西周は今すぐ水を流して麦を台無しにするべきです」と。
西周は“放水”という、東周の利益になる行為を「あえて」行ったわけだ。
ここから、“放水”に「手を抜く」「わざと負ける」という意味が生まれたようだ。
さて、先生から“放水”を求められた私だが、返答はもちろんこうだ。
我不放水!
たとえ遊びでも、勝負はいつだって真剣なのだ。

「手を抜く」「わざと負ける」「勝たせてあげる」「手加減する」など日常でジョークに使えそうで参考になりました。
返信削除コメントありがとうございます!そうですよね。“放水”は私もこれから使っていきたい表現です。
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